TEEN IDOL.MV

2017年4月29日16:00 ~ 22:00

Flyer_20170429

■NOTICE:
 妙なMVを観た。青白いライトに照らされたバスルームにあって、見知ったハイティーンのアイドルが、ダクトテープで簀巻きにした男をシャワーヘッドで撲殺するMVだ。ぼくはたまたまそのMVをテレビで観ていて、バスタブに飛び散る血のディティールがいやにリアルだなぁ、なんて暢気なことを思ったのだけれど、シャワーヘッドで殴られている最中、画面のなかの男は実際のところ必死に抵抗を試みているようだったし、何より殴られる回数が重なるごとに抵抗の動きが鈍っていくその様は、こういってよければ演技ではありえないような生々しさを伴っていた。
 こんなアイドルのMVもあるのだなぁ、と思い、画面のなかの男が死にゆく様を見届けていると、〈このMVで行われている行為は、実際の殺人に他なりません〉というテロップが入り、〈殺人は法で罰せられます、絶対に真似をしないでください〉と文字列は続いた。ん? どういうことだ? と思ううち、シャワーヘッドの先端で三十数回ほど頭部を殴られた男はついにぴくりとも動かなくなり、撲殺を完遂したハイティーンのアイドルは荒い息をつきながらカメラに向かってゆっくりと近づき、レンズに付着した返り血を真っ白なタオルで丁寧に拭い、そして笑った。
 MVはそこで終わっていた。テレビの前でぽかんとするぼくをよそに、暗転した画面端に『2017年春 アイドルMV大特集!』という馬鹿みたいに脳天気なフォントがポップアップし、次に流れたのは乃木坂46の「インフルエンサー」のMVであり、そこでぼくは夢から現実に引き戻されたような心地を覚える。
さっきのMVは何だったのだろう? と思うや、あれが何の曲のMVだったのか思い出せないことにぼくは気づく。急いでネットで検索をかけてみるも、それらしい情報は何ひとつヒットしない。次いで、MVの最中に流れていたはずの歌詞も、曲調も、何もかも思い出せないことにぼくは気づく。
 もしかして、さっきのはテレビを観ながらうたた寝するうちに見た夢だったのではないか、という疑念が頭をよぎるも、それにしてはMVのディティールにまつわる記憶が鮮明に過ぎ、ぼくはそうした可能性を否定する。
 いやそれ以前に、あのMVに出ていたアイドルは誰だったのか。見知ったハイティーンのアイドルであるかのうように思ったが、記憶を探れどそれらしい顔に心当たりなどありはしない。そもそもぼくはそれほどアイドルに詳しいわけでも何でもないのだ。メンバーの顔と名前が一致するアイドルグループなんて乃木坂と欅坂と、あとは良くてエビ中や夢アドくらいしかないわけであって、さっきテレビに映っていたアイドルの顔をまるで知らないことに思い当たる(まことに余談だが、乃木坂46の齋藤飛鳥はぼくの推しメンであり、彼女の書くエッセイは他にはない読み味がある。気になる方は『別冊カドカワ 総力特集 乃木坂46』のVol.1〜3を読まれることを強くおすすめしたい)。
 録画しておけばよかった、という後悔がぼくを襲う。あれはきっと、本来は存在しないMVだったのだ。そんな根拠のない直観を抱いてみれば、観てはいけないMVを観てしまったのだという正体不明の後ろめたさだけが、心中にあって目に見えない澱のように沈んでいるのを自覚した。偶然とはいえ、そうしたMVを観てしまったいまとなっては、もう一度あのMVを観たいという気持ちを抑えるのは至難の業といって差し支えなかった。
 あのMVで鳴っていた音楽は、いったいどのような音楽であったのだろう。あのMVに映っていたハイティーンのアイドルは、一体どんな見た目のアイドルであったのだろう。記憶から奇妙に欠落したディティール群を埋め合わせるべく、あれから今日に至るまで、ぼくは度々考える。
 とびっきり踊れるアンニュイな音楽に合わせて、とびっきりクールで綺麗な女の子が殺人を犯すMVだったら素敵だな。そんなことを思い、ぼくは今日もあのMVを探している。

 

 

■TEEN IDOL.MV @音楽喫茶 茶箱
■DATE: 2017.4.29(sat) 16:00-22:00
■DOOR: \2,000(1Drink)

■Guest DJ:
melo_photo
melo (ANISON MATRIX!!/elemog)

1990年生まれ。2009年より本格的にキャリアをスタート。
Bassline, Grime等のUKベースにRAVEの要素を存分に盛り込んだ選曲が特徴で、
現在は2本のレギュラーパーティーを中心に各地のパーティーで活躍中。
2014年6月には1st Mixtape「Acid Killinger」を発表し、大きな注目を集めた。
DJとしての活動の他、歴代block.fmチャンネルの中でも異色の番組・
「MOGRA工業学院放送室」でパーソナリティを務めるなど、
活躍の場をさらに広げている。

■DJ:
Meiryo (HOUSE ON DEMAND)
Rei Watanabe (渡辺書房)

■Flyer Illustration:
雨水 龍


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